俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
「あの、リディ」
 カリッドが愛称で呼ぶことに慣れろとしつこく言ったせいか、モニカの方もカリッドをリディと呼ぶことに躊躇わないようになってきた。ただ、不意をつかれたときなどは未だに「団長」と呼んでしまうときもある。それでも、カリッドにとっては何気に嬉しいこと。

「ここから舞台までは遠いですよね。役者さんが小さく見えませんか?」

「それはこうやって見るんだ」
 カリッドはモニカの脇腹に手を差し入れると、ふわりと彼女を抱き上げ自分の膝の上に座らせた。彼女を背中からすっぽりと包み込むように。

「え、と。なぜ私はここに座っているのでしょう? そ、それに重くないですか?」

「君は小柄だからな。こうした方がよく見えるだろう? それよりもこれを使ってみろ」

< 107 / 177 >

この作品をシェア

pagetop