俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
 ピシッと、矢が放たれ、バシッと的に当たる。
 やはり彼女はそこにいた。今日の任務を終えてからここで練習をしているのだろう。その真面目さと体力には舌を巻くほど。

 次の矢を手にしようとするモニカに、カリッドは声をかけた。

「モニカ、今、いいか?」

「あ、団長。お疲れ様です。どうかされましたか? 任務ですか?」

「ああ、個人的な任務だ」
 カリッドは重々しい表情で答えた。

「はぁ、何でしょう?」
 個人的というところが気になるところだが、団長に逆らってはならないとモニカの本能が叫んでいる。

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