俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
「ここではちょっと……。俺の執務室にまで来て欲しいのだが、可能か?」

「御命令であれば」
 モニカは弓と矢を片付け始めた。彼女が自分の弓を心から大事にしていることをカリッドも知っている。

「お待たせしてしまって、申し訳ありません」

「いや、急に頼み事をしてしまった俺の方が謝るべきだな。練習の邪魔をして申し訳ない」

「いえ、今日はそろそろ終わろうかと思っていたところでしたので」
 という気遣った一言が言えるのも、彼女の魅力的な一つであると思っている。

「それで、どのような任務でしょうか」
 カリッドの執務室で、向かい側のソファに座ったモニカが身を乗り出した。身を乗り出したのは、少しでも近くで話を聞きたいという気持ちから、だろう。

「うん、まぁ。その、楽にしてかまわない」
 言うと、モニカは少し座り直して、乗り出していた身を元に戻した。

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