俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
 自分で提案しておきながら、カリッドは心の中では超絶焦っていた。

(我ながらなんて馬鹿げた提案をしてしまったのだろう)

 だが、これはチャンスだ。彼女と、堂々と接吻を交わすための。

「え? 口づけ? なんで?」

「その、俺たちは恋人同士だろう? 口づけの練習もしたほうがいいと思うのだが。だからって、今から口づけの練習をする、と言うと君は身構えるだろう?」

「いや、まあ、そうかもしれませんが……。だからって、そんな急に団長のことを、そんな風にお呼びできないですよ」

「口づけ、一回だな」

「ええー」
 と、また、モニカがカリッドの耳元で大きな声をあげたため、彼は顔をしかめた。

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