ママの手料理 Ⅱ
蝶の舞
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3年前まで、私には名前が無かった。


いや、個々を区別する為の番号はあったけれど、それは単なる生年月日でその他に何の意味も持ち合わせていなかった。




私の名前は0917番、世界三大怪盗のうちの1つ、怪盗パピヨンが経営する下僕養成所で育った。


下僕養成所は、ご主人様にどんな無理難題を言われても必ず言われた事を守り実行出来るよう、私達を1から鍛える場所だ。


そこでは0歳から20歳までの子供達が昼夜問わずに勉強し、教養を身に付ける。


下僕のほとんどが孤児や忌み子と呼ばれた子供達、もしくは大叔母さん自らが誘拐してきた子供達だ。


物心ついた時からご主人様に引き取られるまでは、私達は1歩も外の世界に出る事を許されないし、私達には全くと言っていい程人権がない。



下僕に人権が与えられ、“ご主人様”と“下僕”の関係性が絶たれる手段は2つだけ存在している。


それは、“養子縁組をして家族を作る事”、“結婚して家族を作る事”のどちらかだった。


しかし、ご主人様の目を盗んで他の人と会う事など大抵は許されないし、誰も嫌らしい自分の飼い主と結婚しようなどと考えない。


だから、下僕から人間に戻れた例なんてほんのひと握りしか存在しなかった。
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