ママの手料理 Ⅱ
「あ、……」


そこで、彼女は自分の口を慌てて押さえた。


「ごめんなさい、何かさっきの台詞聞いた事がある気がして…」


「謝らないで。多分それ、紫苑の記憶が蘇ってきてる証拠だと思うから」


俺達に向かって敬語で話してくる彼女に、湊が驚いた様に笑いながらフォローをする。


「そう言えば紫苑さん、俺達の名前も何となく分かりますよね?昨日、大也さんが琥珀がなんちゃらって言った時、琥珀さんが誰か分かってたようですし」


続いて聞こえた航海の声に、俺は苦笑いを浮かべた。


(普通ここで昨日の話題掘り返すか……?)


「あ、琥珀…さん、分かります。仁さん?とも、昨日お話しました」


「本当?良かった良かった!あ、そこに立ってるのもなんだし朝ご飯食べる?ヨーグルトあるから」


早くも家族全員の顔と名前が一致したらしい彼女は、湊の声に頷きながら視線を横にずらした。


その目が、俺の視線とかち合う。


「……あ、」


俺が帰ってきていたから驚いたのか、彼女は目を丸くした。


「…ヨーグルト食べ終わったから、上行ってるね。お店開くなら手伝いするから呼んでー」


彼女の目は“気持ち悪い”と言っていなかったけれど、何を言われるかなんて分かったものじゃない。
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