ママの手料理 Ⅱ
まるで航海の様にぎこちない笑顔を作った俺は、さっさと容器を捨てて彼女の横をすり抜けた。


「お店開くか分かんないけど、一応支度だけしといてー!」


後ろから聞こえてくる店長の声に、俺は伸びをしながら返事をしてドアを閉めた。




「あ、あの!」


(ん?)


階段に向かって歩きながら手を頭の後ろで組みかけていた俺は、背後から呼び止める声を聞いて振り返った。


「あれ、どしたの?」


パジャマ姿のまま俺を見つめる紫苑ちゃんは、下唇を噛み締めていた。


「あの、大也さん…昨日の事で、」


俺は目を丸くして、はははっ、と笑い声をあげた。


「昨日の?ああ、俺全然気にしてないから大丈夫だよー!理性的に受け付けない事なんて沢山あるだろうし、そりゃあ気持ち悪いって思っちゃうよね!」


昨日、あんな事があって結局琥珀を想い続けると決めた以上、開き直るしか道はなかった。


いひひひっ、と謎の笑い声をあげながらまた歩き出そうとすると、


「違うんです、そうじゃなくて!」


彼女の切羽詰まった声が、俺の行く手を阻んだ。


「あの時、確かにちょこっとだけ気持ち悪いって思ったんですけど…。でもそれと同時に、この感覚知ってるって感じたんです」
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