ママの手料理 Ⅱ
「あ、おはよう大也!見てこのマカロン可愛くない!?」


裏口から店に入ると、既に開店準備をしていた少女が振り向いて花のような笑顔を向けてきた。


「おはよー!どれどれ?」


俺に来て来てと手招きをする彼女の名は、丸谷 紫苑(まるたに しおん)。


俺は湊から渡された荷物を持ったまま、彼女の傍に駆け寄った。



彼女は去年の12月、俺が公園で見つけたことによりこの家族に仲間入りした。


2兆円という多額の保険金をかけられた彼女を救い、亡くなった2つの家族の復讐をするため、俺達はOASISに攻め入った。


その最中、秘密裏に動いていた俺達の予想通り、mirageの一員だった伊織がOASISに寝返って紫苑ちゃんを誘拐した。


OASISの13人目の幹部、“ニュー”として紫苑ちゃんを殺そうとしていた彼だけれど、それらの行動は全て荒川次郎に脅されていたからで本心ではないはずだ。


2年前のOASISと警察の抗争で伊織は琥珀の右腕に怪我を負わせていて、彼はその弱みに付け込まれていたのだ。


最も、


「伊織の、たまに片手を開いたり閉じたりさせる癖分かるか?…あれは、ストレスや緊張、心理的葛藤から起こる行動らしい。…で、今までのあいつの行動を見る限り…。あいつだな、俺の手をゴミにしたのは」


と、夜中に作戦会議をしていた最中に琥珀が唐突にそう言っていたから、彼は伊織が真実を知るずっと前から真相に辿り着いていたのだけれど。
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