ママの手料理 Ⅱ
(ん、…何これ)


取り敢えず受け取ってみるものの、それが何なのか検討もつかない。


透明なカバーがつけられたそれは初めて見るもので、カバーの右下にはちぎれた紐のようなものがぶら下がっていた。


「これ、何?」


コンコンと手で軽く叩いてみるけれど、何の変化もない。


戸惑う私に、


「それは、スマートフォンというものです。私達は、省略して“スマホ”と呼んでいます」


彼女は、丁寧に教えてくれた。


(スマホ…)


初めて聞く言葉だ。


見るからに硬そうだから食べ物ではないだろうし、新手のアイマスクという訳でもないだろう。


眉間に皺を寄せながら、スマホなるものを観察していると。


「こちらのボタンを押すと電源がつきます」


0823番は、私のスマホの横に付けられたボタンを押して見せた。


「わっ、」


するとスマホの画面が明るくなり、綺麗な紫色の花の写真と共に日付と時間が表示された。


『5月9日(月) 19:28』


「凄い…これ、日付と時間が分かるの?」


「その通りです」


優しい彼女の声を聞き、私はうわぁ、と感嘆の声を漏らした。


ずっと時間を知る術がなくて困っていた私の為に、まさか彼女がこんなものを持ってきてくれたなんて。
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