裸足のシンデレラは御曹司を待っている
ただ重なるだけのキス。それは、とても甘く温かい。
そして、少し切なく感じた。
離れていた月日を埋めるぐらいの熱いキスを期待していたのに、優しく唇を合わせただけで、チュッと音を立てて、唇が離れる。
ゆっくりと瞼を開けると近くにある直哉の瞳が寂し気に揺れ弧を描く。

「遥香、俺でいいのか? 後悔しないのか?」

そんな、切なげな瞳を向けられて、愛おしさが募る。

「私、直哉さんにずっと会いたかったんです。ずっと待っていたんです。だから後悔なんてしません。……ずっと一緒にいてください」

「ああ、ずっと一緒にいよう。もう、離さない」

直哉の手が私の頬を包み、再び唇が重なった。
啄むように何度も繰り返すキスが心地良く、溶けてしまいそう。
吐き出す息さえも甘い気がする。

心が通じ合った好きな人と交わすキスはなんて気持ちいいんだろう。

首の角度を変え、だんだんと深いキスに変わる。
それは、待ちわびていた熱いキス。

厚みのある舌が私の中に忍び込む、舌先で探るように上顎を撫でられた。彼の舌を追いかけて、口の中で舌を絡めれば、唾液が溢れ出す。
それをコクンと飲み込むと胸の中まで熱くなる。

すると、唇が離れ直哉にギュッと抱きしめられた。
艶のある低い声が耳に響く。

「遥香……」

直哉のつけているオリエンタルノートの香りに包まれた。

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