裸足のシンデレラは御曹司を待っている
私を抱きしめている腕が緩み、そっと背中をさすった。

「これ以上は、抑えられなくなりそうだ。でも夜まで我慢するよ」

そう言われてハッと我に返る。
真哉をお迎えに行って、親子の対面をする予定なのに……。
私ってば、すっかりその気になって、恥ずかしい。
でも、ずっと会いたかった直哉とのキスも、抱きしめられた時に感じる腕の心地よさも離れがたく思った。

直哉も同じ気持ちなのか、背中にあった手が徐々に上がり、私の髪に指を梳きいれる。
そして、頬にチュッとキスを落とし、耳元で囁く。

「だから、今夜は泊まってくれるよね」

耳から入った直哉の言葉にあてられ、体中の血が一気に駆け巡ったように感じる。嬉しいやら恥ずかしいやら、どんな顔をしていいのかわからくなってアワアワしてしまった。
思わず両手で顔を覆い指の隙間から直哉をチラリと覗き見しながら返事をした。

「し、真哉も一緒に泊まっていいですか?」

「もちろんだよ」

直哉が蕩けるような笑顔を浮かべた。
その破壊的なイケメンの笑顔にポワーッと見惚れちゃう。
あの顔を殴ろうと思っていたなんて、そんなもったいない事しようとしていた自分が信じられない。

「ん、遥香、ボーっとしてどうしたの?」

「ううん。何でもないっ」

ぶん殴りたいなんて思っていたのは、絶対に秘密なのだ。



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