裸足のシンデレラは御曹司を待っている
海洋博公園、P7の立体駐車場に車を停めた。
ジンベイザメのモニュメントを見つけ、興奮した真哉が「おさかなだぁ」と指をさしながら大きな声を上げ走り回った。
転ばないうちにと取り押さえられた真哉は、左手にパパ、右手にママで手を繋がれ、満面の笑みを浮かべる。

私たちがずっと欲しくてやっと手に入った家族の形だ。

ウミンチュゲートをエスカレーターで上がって行く。背景にエメラルドグリーンの海と遠くに伊江島が見える。3階で降りてチケットを買い、水族館の中へ足を進ませた。

まず最初にある、イノー海の生き物たちの水槽の中にはヒトデやナマコ、イノー(沖縄の方言で珊瑚に囲まれた浅い海)に住む生き物が入っている。
ちょうど、子供の目の高さのガラスにヒトデが張り付いていた。

「おほしさまのみたいなのにキモチわるーい。あっちにうんこみたいなのいる」

楽しくってテンション高めの真哉は、ナマコを見つけトンデモない事を口走る。

あちゃ~。ナマコか。うん、言うよね。保育園児男子のツボだよね。
でも、母親としてはいたたまれてない。
チラリと直哉を伺い見るとクスクスと笑っている。

「ごめんなさい。嬉しくて興奮しているみたいで」

つい、言い訳ぽい事を言ってしまう。

「いや、楽しそうにしてくれて安心したよ」

「直哉さんも子供の頃、ご両親にそんなこと言っていたの?」

すると、少し困ったように直哉は笑った。

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