裸足のシンデレラは御曹司を待っている
びっくりした表情を浮かべる真哉に向かって、眉尻を下げた直哉が声を掛けた。

「ずっと、会えなくて悪かった。ごめん」

真哉は、まだ信じられないという様子で、私と直哉の顔を交互に見比べている。私は”大丈夫だよ”と気持ちを込めて、真哉の背中をポンポンと押した。すると、真哉の瞳からポロポロと大粒の涙がこぼれ始める。
手をギュッと握り込み、その小さな拳を振り上げて直哉に向かって振り下ろした。

「パパのバカっ! おとなのくせにまいごになったら ママもシンちゃんもしんぱいするのに バカ」

直哉は両手を広げ包み込むように、真哉の小さな体をギュッと抱きしめた。

「心配させてごめん。これからはずっと一緒だよ」

「パパのばかぁ」

”うわーん”と、今までずっとパパに会いたくてガマンしていた気持ちが抑えきれないとばかりに大きな声を上げ、パパの腕の中で泣きじゃくる真哉。
その間も直哉は「ごめん」と何度も口にして、息子を抱きしめていた。

ふたりの様子を見ている私も目頭が熱くなり、鼻の奥がツンとしてくる。

「シンちゃん、パパに会えて良かったよね。この後、水族館に連れて行ってくれるって楽しみだね」

「うん……」

バッグからハンドタオルを取り出し、自分の目頭を押さえた後に、ぐちゃぐちゃになった真哉の顔を拭ってあげると、少し落ち着いたのかポソリと呟く。

「すいぞくかんいく。パパと、おさかなみる」

照れくさいのか、少しすねた感じの真哉の様子がかわいい。
でも、これならもう、大丈夫。
直哉と視線が合う。自然と笑みがこぼれた。
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