裸足のシンデレラは御曹司を待っている
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ガラガラと引き戸を開けて、手元のスイッチをつける。パッと部屋の中が明るく灯り、眩しさで眼をしばたたせた。真哉とふたりで暮らす自宅兼管理棟は平屋建ての2DK。こじんまりとした住まいだけれど、真哉と暮らす分には十分な広さだった。

ベッドのある部屋の隅にあるチェストの引き出しを開けて、真哉のパジャマと下着、明日の分の服をセットし紙袋に入れた。

そして、自分の分の支度を始める。下着の入っている引き出しを開け、暫し悩む。
だって、この後の事を考えると、なるべく綺麗でセクシーなものがいいな。なんて思ってしまうと、顔の筋肉がだらしなく緩んでいる気がする。

両手でパチンと頬をはたいて、マシなのを選び、急いで残りの服を選んだ。
「早く、戻らないと真哉が起きちゃうかも……」
と立ち上がったことろで、玄関から声が聞こえてくる。

「遥香、帰っているのか?」

「陽太……」

いつもなら真哉が”ようちゃん”と笑顔をむけるのにその姿はなく、夕飯時の時間にも関わらずTVもついていない静かな部屋の様子に陽太の表情が変わる。

「シンは?」

昨日、陽太に告白をされて考えてくれと言われたばかり、それで、今、この状況。でも、嘘をついたり隠すような事はしたくなかった。

「あの、柏木さんの記憶が戻って……今、シンちゃん柏木さんに見てもらっているの」

「っざけんな。散々、放って置いて今さらノコノコやって来て、父親面すんのかよ」

真哉が産まれた時から……。イヤ、お腹にいる時からずっと、手助けしてくれた陽太にしてみれば、納得できないのは仕方ない事。

「ごめんね、陽太。でも、真哉にとって本当のパパなんだよ」

陽太が真っすぐな瞳を向ける。

「で、遥香はこの先どうすんだよ」

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