裸足のシンデレラは御曹司を待っている
「えっ、どうするっていきなり言われても……」

まだ、今日、記憶が戻った話を聞いたばかりで、やっと親子の名乗りを上げただけ、この先の事はこれから話をしていこうと思っていた。だから、今すぐにどうするなんて聞かれても答えようがない。
ハッキリと答えられない私の反応に陽太は苛立ちを隠そうとはしなかった。

「だから、沖縄(ココ)での暮らしを捨てて、東京で暮らすのかよ」

東京で暮らす……。
そうだ、直哉とのこれからを考えて行くならば東京で暮らす事を考えないといけないんだ。
でも、まずは直哉と話し合って、それから考えたい。
早く、直哉の所に戻らないと……。

玄関をふさぐように立っている陽太の横をすりむけようとした。けれど、陽太の腕が僅かな隙間をふさぐ。
そんな事をする陽太に睨みつけるような視線を向けた。

「もう、行くから、通して」

私の突き放すような態度に、陽太は眉根を寄せて、苦しそうに言葉を吐きだす。

「……いやだ。アイツの所になんて行かせたくない。オレ、ずっと待っていたんだ。早く、遥香を支えられるぐらいの大人になりたくて、社会人になって仕事を覚えて一端になったら、家族になろうって、ずっと思っていたのに……」

2つ年下で27歳になった陽太。
私が妊娠した時は、陽太は社会人になったばかりだった。
まさか、あの頃からそんな事を考えていたなんて思いも寄らなかった。
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