裸足のシンデレラは御曹司を待っている
キラキラと輝くダイヤモンド、プラチナのリング。指輪のはまった左手の薬指を目の高さまで持ち上げた。
ダイヤモンドの脇、プラチナリングの部分にミンサー織りの特徴ともいえる市松模様のような、五つの四角と四つの四角の模様が刻まれている。

沖縄八重山地方に古くから伝わるミンサー織りは、その昔、婚礼の印として女性から男性へ帯が送られていた。帯の中に想いを込めて織り込んだ『いつ (五) の世 (四) までも末永く私と共にいてください』という意味の五つの四角と四つの四角の模様だ。

いつまでも末永くずっと一緒にいようと想い出の場所で誓ってくれたんだ。
こんなの嬉しすぎるに決まっている。

「直哉さんの事、どこまで好きにさせる気ですか」

私の問いに直哉はフッと笑い、それはナイショだよと言うように唇に人差し指を当て首をかしげる。
その艶を含んだ微笑みに思わず見惚れてしまった。

ぽわーっと、直哉に見惚れていると私の洋服をツンツンと真哉が引っ張る。

「ママ、パパ、シンちゃん、つかれちゃったよ」

「ごめん、ごめん、車に戻ろうか」

直哉と私には、ここは大切な思い出の場所で、その上新たな思い出が加わったのに、4歳の男の子には退屈だったようだ。
興味のない場所で息子が発する呪文「つかれた」「ねむい」「おトイレ」が出されればその場から動かなければならない。

駐車場まで戻ると、駐車場の横にある鳥居の先のすっごーい急な階段を真哉が興味津々の様子で指をさす。

「ママー、あそこいこうよ」

あれ?疲れたんじゃぁなかったっけ⁉

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