裸足のシンデレラは御曹司を待っている
いざ言おうとすると緊張する。膝の上に置いた左手に右手を重ね、指輪から勇気をもらう。

「今、城間別邸に泊まっているお客様、柏木直哉さんですが、真哉の実の父親なんです。彼は5年前に事故に遭って、ずっと会えずにいましたが、今回、いろいろありまして、彼に真哉が息子だと伝える事が出来ました」

陽太は、眉間にしわを寄せ私の言葉を聞いている。横にいるおばあは、口に手を当て驚きの表情だ。

「その……柏木さんからプロポーズをしてもらいました」

「まあ、おめでとう。遥香ちゃん」

「結局、アイツと東京に行くんだ……」

奥歯を噛みしめるように陽太は言葉を吐き出した。
私は心の中で”陽太ごめんね”と、謝り続ける。
陽太の様子に気づいたおばあが、陽太の背中に手を当てた。

「遥香ちゃん、おめでたい話だけれど寂しいさね」

おばあの瞳が潤んでいる。もしかして、おばあも陽太と私が結ばれることを望んでいたのかもしれない。

「おばあと陽太には、今までたくさんお世話になって感謝の気持ちでいっぱいです。おばあと陽太が居なければ、一人で真哉を育てていくのは難しかったと思います。どれだけ感謝してもしきれない。今まで本当にありがとうございました」

感謝を込めて、深く頭を下げた。目頭が熱くなり、鼻の奥がツンと痛む。
それでも、泣かないようにグッと歯を食いしばった。
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