裸足のシンデレラは御曹司を待っている
プールで遊んで疲れた真哉はお昼寝タイム。
眠っている息子を新米パパの直哉が見てくれている間に荷造りをしに自宅に戻った。

夏場だから沖縄でも東京でもそんなに服装の差はない。海風のある沖縄は、気温が33℃以上になる事はあまりないから、ニュースで見る限りでは東京の方が暑い日が多いぐらいだ。

大き目のバッグに東京へ向かうための荷物を詰め込みながら、そんなことを思いつつ自分と真哉の着替えを用意した。
一通り支度が終わった後、部屋を見渡すと、真哉のために買ったキャラクターが入ったおもちゃや食器、布団カバーが目につく。
狭いながら思い出の詰まった我が家。
とりあえず、1週間後に戻って来て城間別邸の業務の引継ぎをしながら東京への引っ越し準備をする予定だ。

正直、東京のあのゴージャスなタワーマンションにこの家で使っている物なんて、持って行っても似合わ無い気もするし、沖縄から東京への配送料もバカにならない。
そう考える捨てる物も多そうだなと思った。

慣れ親しんだ場所を引き払うのに、少し寂しいような気持になるのは、きっと誰にでも起こりうる感傷なんだと自分に言い聞かせて立ち上がる。

スマホの画面に視線を落とす、表示された時刻は17時を過ぎていた。

慌てて別邸に戻ると夢中になってゲームで遊んでいる真哉とタブレットを操作している直哉、二人に声を掛けた。

「遅くなってごめんね。お風呂は入らないとね」

「あれ? 今日は居酒屋に行くんじゃなかったの⁉」

「そうだよ。だからお風呂入らないと、後、タクシーを頼んで……」

と、タクシー会社に電話して19時に迎えに来てもらうように依頼した。
側で聞いていた直哉が不思議そうな顔をしている。
「19時に集合だったよね?」

「そうそう、19時集合だよ。うちなーたいむだから大丈夫だよ」

19時集合だとその時間から支度を始めて出てくる人も居る、みんな30分から1時間ぐらい経ってからのんびりと飲み会が始まるのだ。
そのかわり、終わりの時刻が読めない。だからお風呂に入ってから飲み会に向かう。
準備としては、正しいのだ。


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