裸足のシンデレラは御曹司を待っている
やだ、まるでお酒大好きの酒豪みたいに思われたらどうしよう。
チラリと直哉を伺い見ると視線が絡み、切れ長の瞳が優しく弧を描く。

「喜んでもらえて嬉しいよ」

そんなこと言って、微笑まれたらイケメンの笑顔にキュンとなって、ますます防御力が下がってしまいそう。

アンティパスト(前菜)が運ばれてきた。
生ハムの中にチーズやトマトなどの野菜が一口サイズに巻かれ色も鮮やかで美しい。
生ハムの塩気とトマトの甘みと酸味が絶妙なバランスでそこにチーズの濃厚な味わいが口の中に広がった。

「これも、美味しいですね。ところでプライベートな事をお聞きしても大丈夫ですか?」

「答えられる範囲ならね」

「お仕事は何をされているんですか?」

「ああ、物流関係の仕事を家族でね。今回は珍しくまとまった休みが取れたから、のんびりしに来たんだよ」

あれ? 無難な話題を振ったつもりだったんだけど、話をそらしている? やっぱりプライベートな話題は避けるべきだったのかな?

「明日のご予定は、お決まりですか?」

「とくに予定は決めていないんだ。のんびり昼寝でもしようかな?」

「お昼寝、いいですね。離れの茶室も良いですし、軒下のハンモックもオススメです。ただ、朝食は近隣のホテルからお持ちしますが、おひるご飯や夕ご飯がないのでご希望がございましたらホテルへ注文もできます。あとは、おすすめのお店をピックアップさせていただきます」

ふいに直哉が悪戯な瞳を向ける。

「明日も安里さんが食事に付き合ってくれたら嬉しいんだけど」


あ、どうしよう。これ以上踏み込んだら、危険なラインを超してしまいそう……。
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