裸足のシンデレラは御曹司を待っている
「この焦燥感が埋まるものならどんな結果であっても知りたいと思っている。今までも失くした記憶を探して手がかりを拾い集めて来た。それでも見つからず5年も経ってしまった」

直哉は、顔を上げ、記憶の糸を手繰り寄せようと鍾乳洞の岩肌を見つめた。
その寂し気な横顔を見つめ切ない思いになる。
出来る事なら5年前の記憶を取り戻して欲しい。そうでなければ、子供の話も出来ない。

「あの……。よろしければ柏木様の観光のお手伝いをさせて頂けませんか?もしかしたら、以前に行った思い出の場所など立ち寄る事もあるかと思います」

そう、直哉の記憶が戻ってくれたならまた明るい道が見えるかもしれない。

「ありがとう。助かるよ」

「では、まず、あの階段を登り切りましょう」

明るめの声を出し階段を指さした。それを直哉がクスッと笑う。

「ああ、そうだな。最初の試練だな」

「無事に上がれたらきっといいことありますよ。観音様にもお参りしましょう」

直哉は泡盛を1本だけ受け取りもう1本はそのまま預けた。
5年を過ぎたら後は1年ずつの契約に切り替わり最高12年までの預かり期間がある。なので、何も問題はないのだけれど、少し不思議に感じた。
もしかしたら、また来るつもりなのかもと思った。

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