裸足のシンデレラは御曹司を待っている
そのほかにタオルと島ぞうり、ミネラルウォーター、そしてカットマンゴーを買い込み再び車に乗り込みドライブを始める。

暫く走り、カーブを曲がると真っ直ぐに伸びた道に出る。
その道の先にはコバルトブルーに輝く海が待ち受けていた。あの時と同じように歩道に植えられた真っ赤なハイビスカスが鮮やかに咲き誇り目を楽しませてくれる。

少しでも思い出してもらいたくて、5年前と同じルートを辿っていた。

手書きでビーチとだけ書かれた素朴な看板の案内に従い。ウインカーを立て、ゆっくりとハンドルを切る直哉を見ていると、あの日に時が戻ったような錯覚に陥った。

駐車場に車が停まり、熱い日差しと青い海、真っ白な砂浜が出迎えてくれる。
早速、さっき買った島ぞうりを直哉に差し出した。以前、来た時は焼けた砂浜を素足で走ったけれど、足に事故の後遺症の残る直哉に無理をさせたくなかったからだ。

「ここで履き替えましょう。焼けた砂も熱いですし、珊瑚や貝で切れたら足が痛いですから」

「ありがとう、気が利くね」

「気が利くついでに、カットマンゴーを買いました。あそこの東屋で食べませんか?」

「マンゴー好きなんだ。嬉しいよ」

直哉の切れ長の瞳が弧を描き子供のような笑顔を浮かべた。その笑顔に心がほころぶ。

「安里さん。やっと笑ってくれた」

「えっ?」

「作った笑顔じゃなくて、心からの笑顔が見れて嬉しいよ」
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