裸足のシンデレラは御曹司を待っている
頭の中の理性を総動員させ、グッと我慢をしたけれど、彼女から伝わる体温に、ドキドキと心臓が跳ねた。

「ご、ごめんなさい」

俺の腕の中で、顔を上げた彼女の顔がすぐ近くにある。黒目がちのきれいな瞳が俺を見つめていた。

「大丈夫?」

彼女の耳に自分の胸の高鳴りが聞こえてしまうのでは!? と、自覚するほど鼓動が早く大きく跳ねているのがわかった。

「はい、助かりました」

熱い太陽の日差しに焼かれ、彼女の首筋に流れる一筋の汗にも嫉妬してしまう。

「怪我していないよね?」

まずいな。
暴走しそうだ。

「はい……。ありがとうございます」

絡んだ視線が離せ無い。
熱い太陽にジリジリと焼かれ、足元に波が押し寄せる。

彼女が身じろぎ、我に返った。
このままだと客という立場を利用したセクハラになってしまうと、やっとの思いで彼女を支えた腕を解いた。
ふたりの間に海風が通り過ぎ、熱を攫っていく。それを、寂しく思った。

「少し歩こうか」

手を差し出せば、彼女が柔らかく微笑み柔らかな手が重なる。そっと繋いだ手の熱を感じながら歩き出した。

波打ち際の砂浜にふたりの足跡が並び、それを寄せては返す波が攫っていく。

恋をしているんだと思った。
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