裸足のシンデレラは御曹司を待っている
「シンちゃん、寝ちゃったんだろ。家まで運んでやるよ」

シャワーをしてもらい、お腹もいっぱいになって、スヤスヤと眠ってしまった真哉を陽太が抱きかかえた。
隣の家までのわずかな距離でも寝ている4歳児の重さは馬鹿にならない。

「ありがとう、お医者さんでずっと泣いていて抱いていたもんだから、体中バキバキになっちゃったから助かる」

そう言いながら、コリをほぐすように肩をグルグルとまわした。
真哉を抱きかかえたまま、陽太はクスリと笑う。

ハイビスカスの垣根と庭を挟んだお隣同士の作り、あっという間に玄関に辿り着き、カラカラと引き戸を開けた。
陽太は慣れた様子でサンダルを脱ぎ、真哉を抱きかかえたまま家に上がり、寝室へ入るとベッドの上に寝かしつける。

「シンちゃんも重くなったよな。産まれた時なんか、ちっちゃくて壊れそうだったのにこんなにやんちゃになって、これからもっと重たくなるんだろうな」

陽太は目を細めて、薄っすらと汗をかき柔らかい毛が張り付いた真哉のおでこをそっと撫でた。

「子供が育つのってホント早いよね。でも、それだけ月日が経っているって事だよね」

5年なんてこうして考えると一瞬だったようにも思える。
そんな事を考えている私の肩に陽太の手が掛かった。

「なあ、シンちゃんの父親って……」

言い淀む陽太が、真剣な眼差しを向けた。

「オレじゃダメか? オレ、遥香のことが好きなんだ」


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