夢みる少女は、寂しがり詐欺師に騙されない。
彼の夢

最近

いつも忙しそうにウサギは帰る

バイトだと思ってた



大学に隣接されたカフェを通ったら

ウサギを見掛けた



ひとりかな?

後ろからのぞき込んだ



テーブルの上には参考書がいっぱいあって

なにか必死に勉強してた



「なにしてんの?」



「…あ…あー、オマエか…久しぶり」



私が声を掛けるまで

ぜんぜん気付かなかった



「うん、久しぶり」



会話したの久しぶり



最近は

挨拶程度だった



「なに?コレ…」



大学の参考書とは違って

私にはさっぱりわからないことが書いてある



「オマエに言ってもわかんない
ずっと取りたかった資格があって…」



ウサギがノートを書きながら言った



「ふーん…ウサギの夢?
受かるといいね」



ウサギの目は真剣だった

ホントに取りたい資格なんだね



きっと叶いそうだね

私の夢と違って



ホントに夢を叶えようとしてる人って

目がキラキラしてるんだ



私の冷めた目は

きっと



叶わないって

諦めてる目だ



ウサギ

なんか

変わったね



「ウサギ、がんばってね」



「帰るの?」



「ウサギが真剣だから
邪魔しちゃ悪いと思って…」



「一緒に帰る?
オレももぉすぐ帰ろうとしてたから…」



「んー…
私は今すぐ帰る」



「急いでんの?」



「んー…」



別に急いでなかった



夢に向かってる

ウサギの邪魔をしたくなかった



それから



キラキラしてるウサギと

冷めてる私

比べるのがなんか辛くて



一緒に帰りたくなくて

嘘をついた



あの時

ウサギは

待っててくれたのにね



秋の海を思い出した



「やっぱり、待ってる
なんか、雨降りそうだし…
ウサギ、傘ないでしょ?」



「あー…うん、助かる」



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