社長の渇愛
「は?さっきからそんな心配してたの?」
「え?当たり前です!」
「はぁー、御笠、助けて!俺、どうしたらいいかわからねぇ……」
亜伊は、とにかくペースが乱れて戸惑っていた。
金の心配なんてしたことも、されたこともない亜伊。
亜伊からすれば、そんなチマチマしたことを心配する心花がわからない。
亜伊が誘い連れてきた食事なのに、心花に出させるわけがない。
そうは考えないのだろうか━━━━
「真田さん」
「あ、はい」
「貴女は、倉澤 亜伊と言う人間がどれ程の人かわからないのですか?」
「え?」
「この方は、最大企業・倉澤ガードの代表取締役ですよ?」
「はい」
「そんな方が、貴女に財布を出させるとでも?」
「それは……でも、お食事代を自分で出すのは、普通のことですよ?」
「社長は普通ではありません」
「そうかもしれませんが…」
「それに社長は、そもそもむやみに女性を食事に誘わない。真田さんと一緒にいたくてお誘いしたんですよ?」
「そうですよね……すみません」
“名前を呼ばせない”
如月の言っていた言葉。
そんな亜伊が、心花にだけは“亜伊”と呼ばせる。
それだけでも“特別”なのだろう。
「亜伊」
「ん?」
「ごめんなさい…」
「ううん。心花、もっと俺に甘えて?
何でもしてあげる。
だから、心花はただ……俺に掴まって委ねてくれればいいんだよ?」
「いらっしゃいませ、社長」
「ん。よろしく」
「奥、どうぞ」
中に入ると、浬大が微笑み奥のカウンターに誘導してくれた。
「こんばんは」
心花は小さく頭を下げ、亜伊に続く。
亜伊が椅子を引いて、座るように促した。
「ありがとうございます」
お礼を言って座ると、隣に座った亜伊が心花の顔を覗き込むように見ながら頬杖をついた。
「何がいい?
とりあえず、適当に握ってもらおうか?」
「は、はい!」
回らない寿司は来たことのない心花。
思わず、肩に力が入る。
「浬大、適当に握ってよ」
「はい。苦手なモノはありますか?」
「だ、大丈夫です。何でも食べ━━━あ!
あの……すみませんが、わさびを抜いていただけると……」
「心花、ダメなの?わさび」
「あ、はい。ごめんなさい」
「別に謝らなくて大丈夫だよ。浬大、それでよろしく」
「はい」
「━━━━ん!美味しい~!」
「良かった!」
「んー!幸せ~」
あまりの美味しさに、満面の笑みになる心花。
亜伊はその姿を微笑ましく見ていた。
「亜伊は食べないんですか?」
「心花を見てるだけで、お腹いっぱい!」
本当に、カッコいい人だ。
“頬杖をつき見つめている”
それだけで、様になるのだから。
「え?当たり前です!」
「はぁー、御笠、助けて!俺、どうしたらいいかわからねぇ……」
亜伊は、とにかくペースが乱れて戸惑っていた。
金の心配なんてしたことも、されたこともない亜伊。
亜伊からすれば、そんなチマチマしたことを心配する心花がわからない。
亜伊が誘い連れてきた食事なのに、心花に出させるわけがない。
そうは考えないのだろうか━━━━
「真田さん」
「あ、はい」
「貴女は、倉澤 亜伊と言う人間がどれ程の人かわからないのですか?」
「え?」
「この方は、最大企業・倉澤ガードの代表取締役ですよ?」
「はい」
「そんな方が、貴女に財布を出させるとでも?」
「それは……でも、お食事代を自分で出すのは、普通のことですよ?」
「社長は普通ではありません」
「そうかもしれませんが…」
「それに社長は、そもそもむやみに女性を食事に誘わない。真田さんと一緒にいたくてお誘いしたんですよ?」
「そうですよね……すみません」
“名前を呼ばせない”
如月の言っていた言葉。
そんな亜伊が、心花にだけは“亜伊”と呼ばせる。
それだけでも“特別”なのだろう。
「亜伊」
「ん?」
「ごめんなさい…」
「ううん。心花、もっと俺に甘えて?
何でもしてあげる。
だから、心花はただ……俺に掴まって委ねてくれればいいんだよ?」
「いらっしゃいませ、社長」
「ん。よろしく」
「奥、どうぞ」
中に入ると、浬大が微笑み奥のカウンターに誘導してくれた。
「こんばんは」
心花は小さく頭を下げ、亜伊に続く。
亜伊が椅子を引いて、座るように促した。
「ありがとうございます」
お礼を言って座ると、隣に座った亜伊が心花の顔を覗き込むように見ながら頬杖をついた。
「何がいい?
とりあえず、適当に握ってもらおうか?」
「は、はい!」
回らない寿司は来たことのない心花。
思わず、肩に力が入る。
「浬大、適当に握ってよ」
「はい。苦手なモノはありますか?」
「だ、大丈夫です。何でも食べ━━━あ!
あの……すみませんが、わさびを抜いていただけると……」
「心花、ダメなの?わさび」
「あ、はい。ごめんなさい」
「別に謝らなくて大丈夫だよ。浬大、それでよろしく」
「はい」
「━━━━ん!美味しい~!」
「良かった!」
「んー!幸せ~」
あまりの美味しさに、満面の笑みになる心花。
亜伊はその姿を微笑ましく見ていた。
「亜伊は食べないんですか?」
「心花を見てるだけで、お腹いっぱい!」
本当に、カッコいい人だ。
“頬杖をつき見つめている”
それだけで、様になるのだから。