お昼寝御曹司とふたりだけの秘密
 ロングスカートに白色のカーディガン。足もとはローヒールの薄ピンクのパンプスを履こうと思っている。

 この服装、おかしくないかな?
〝ふたりで出掛けよう〟なんて言われたから、いつも以上に自分の格好を気にしていた。

「そろそろ行こうか」

 リビングへ戻ると、ソファから立ち上がった涼本さんが声をかけてきた。ドキドキしながら「はい!」と返事をして、鞄を持って彼と一緒に部屋を出た。

「あの、今日はどこへ行くんですか?」

 マンションの駐車場で涼本さんの車に乗り込んだわたしは、エンジンをかけた彼に尋ねる。彼の息抜きということだけれど、行き先などはなにも聞いていない。

「とりあえず買い物だな」

「なにか欲しいものがあるんですね」

「ああ。君が生活するのに必要なものを」

「わたし……?」

 きょとん、としたわたしにうなずいた彼は車を発進させる。

「当分の間君は俺のところにいるのだから、生活で使うものをそろえよう。食器も必要だし、布団も欲しいだろう」

 たしかに、布団はあったほうがいい。
 この一週間はベッドとソファを涼本さんと交代で使っていたから。

「ネットで買ってもいいが、実際に見て買った方が思っていたのとは違うというのがないんだよな」

「あ、わかります! わたしもなるべくお店で見て買いたい派です」

 そう言ったわたしに彼は、前を向いたまま小さく笑った。
 車の中でその他必要なものをふたりで話していた。こういう会話を涼本さんとできるなんて、なんだかうれしい。
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