逃げたいのに、ヤンデレ彼氏が離してくれません
フリーズする私を見た成瀬くんは、はっと我に返ったように私に触れていた指を離す。
いつの間にか、ハイライトの失われた成瀬くんの瞳に光が戻っている。
「……悪い。いつもみたいにお迎えなかったから……。……痛かった?」
しゅん、と怒られてしょげる子犬みたいに眉を下げる成瀬くん。
「アッ……ダイジョブ、デス……」
私は赤べこのようにこくこく頷いた。
くそ! 愚か、あまりにも愚かッ!
一瞬でも成瀬くんが光属性を持ったヒーローかと思った私が馬鹿だった!!
ある意味期待を裏切らない展開ではあるけれども!! そこは是非とも期待を裏切って頂きたかったよ!?
成瀬くんは私の反応を見て、分かりやすく安心した顔をする。
そして、私の寝ぐせが付いていたであろう辺りを優しく撫で、とろりと蜂蜜を被せたような甘い声音で、言った。
「今日もちゃんといいこで、待ってた?」
「……は、はい」
成瀬くんは満足そうに「いいこ」と、壊れ物を扱うみたいに私の頭を撫で続ける。
……傍から見たら、飼い主とペットだ。
いやいや、断じてそんな性癖私にはないけど!! 何なら私猫派ですし!? などと、他所事が脳裏によぎった瞬間、こつん、と私の額に成瀬くんの額がくっつく。
吐息が掛かる程近く、成瀬くんの拗ねた表情が視界を埋め尽くす。
「こら。また、余所見した」
「ひ」
「約束破ったら、駄目だろ? ……ああ。それともまた、身体で分からせたほうがいい?」
成瀬くんの長い指が、ワンピースの裾からはみ出た太ももをつうっとなぞった。
月明りの僅かな光だけが差し込む暗がりの中で、猛禽類を思わせる鋭くも飢えた瞳が爛々と光っている。
この展開前にもあったような……はっ、やばいやばいこれはまずい!!! ひょっとしなくても貞操の危機では!!??
「ちょちょちょちょ、待って、ストップ! 成瀬く、」
「無理。待てない」
だんだんと押し倒されていく私の身体。
多分ベットのシーツが背中についたら最後だ。問答無用で成瀬くんに食べられる。
私は渾身の力を振り絞って、成瀬くんの胸を押し返し……って、全然動かねえ岩かこの男はぁ!!
あ、もう無理だ……倒れる……と、諦めの境地達したその時だった。