逃げたいのに、ヤンデレ彼氏が離してくれません

 ──ぐうううう。

 ぴたっと、成瀬くんの動きが止まる。
 何度か瞬きをした後、私の顔を見て、次に私のお腹を見下ろした。


「……」

「……」


 訪れた数秒の無言の間は、私の羞恥心を煽るには十分な時間だった。

 お腹空いてたの……完全に……忘れてた……。

 さっきとは別の意味で顔が熱くなる。私はお腹を押さえて、今にも消え入りそうな声で提案する。


「あの……ごはん……食べませんか……。なんなら、私作るので……」

「……むぎが?」


 ものの数十秒前に私に襲い掛かろうとしていたはずの男に、一体どんな心境の変化があったのやら。
 
 しばらく考え込むように押し黙ったかと思えば、すくっとベットから降り、ベットからはみ出た私の足へ跪いた。
 何やら私の足元でかちゃかちゃと音がする。


「ど、どうしたの?」


 むくりと起き上がったと同時に、私の左足に合った圧迫感が無くなった。

 しゃがんだ成瀬くんと目が合う。
 その手には、さっきまで私を拘束していた足枷が握られていた。

 成瀬くんは涼しい顔でさらりと、言った。


「ごはん作るのに邪魔だと、思って」

「あ……ああ。どうも」


 どんだけ私の手料理食べたいんだ……この人……。


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