仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。


「妹さんの病院の支払い手続きやらは全て終わらせてきたよ」


 玲司との結婚の約束となった妹の桃果の治療費の援助。穂乃果は委任状を書いたくらいで面倒な手続きは玲司の秘書の原口が終わらせてくれたらしい。


「そうですか。ありがとうございます」
「礼には及ばないよ。妻の大切な家族のことなんだからね」


 妻、か……


「そうですか」


 そこからは何の会話もなくただ無言の車内。なにも考えずにボーッと変わる景色を窓から眺めた。


「着いたよ」


 一時間ほど車に揺られ到着した玲司の家は大きな一軒家だった。


「ここ、ですか?」
「そうだよ」


 駐車場に止められた車から降りると穂乃果のボストンバックはすでに玲司が持っていた。自分で持つと言おうと思ったが別にそのくらいしてもらってもいいか、と差し伸ばした手を引っ込めた。
 テレビなどに出てきそうな立派な洋館、なのに庭の花壇の花は枯れてしまっている。一人で住むには大きすぎて手入れが間に合わないのだろうか。


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