仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。
キャベツの芯を取りながら穂乃果は盛大に独り言を口にする。
「今日は花を植えたから暇じゃなかったけど、明日からなにしよう。仕事……仕事がしたいっ」
根っからの仕事人間の穂乃果はやっぱり仕事がしたい。家にずっといるなんて無理だ。玲司が帰ってきたら相談してみよう、そしたら玲司に少しは出してもらっているお金も返せるはず。そう思いながら穂乃果は勢いよくキャベツを千切りにした。
「ただいま」
ガチャリとリビングの扉が開いた音と共に玲司の声が聞こえてきた。
「穂乃果、ただいま」
キッチンまで来た玲司は必ず帰ってきたことを穂乃果に伝えてくる。勝手に部屋に行けばいいのにと穂乃果は思っているけれど「おかえりなさい」と返事を返した。
「外の花見たよ。花を買いに出かけてたんだね。家に帰ってたら外が暗くても花があると明るく見える。穂乃果一人で大変だっただろう?」
「いえ、植え替えただけなので」
「そっか。ありがとう、久しぶりに家に花が咲いているのを見たよ。それに凄くいい匂いだ。何だろう? お肉かな?」
話しながらも肉を焼いていたのでちょうど出来上がった生姜焼きを皿に移し、千切りしたキャベツと一緒に盛る。
「生姜焼きか、美味しそうだな」
「着替えてきたらどうですか?」
「いや、温かいうちに食べたいから食べてから着替えるよ」
「そうですか」
出来上がった生姜焼き、玉ねぎと卵の味噌汁、白米をダイニングテーブルに並べ、向かい合って食べる。座る位置はもうきまって一番初端っこ。