冥婚の花嫁は義弟に愛を注がれる
寄り添う心に新たな出会い
***


 柔らかな毛先にくすぐられて、まぶたをあげると、まるで赤子のようにすり寄る千隼さんが、私の胸に顔をうずめていた。

 すっかり安心し切って眠る彼が愛おしくて、そっと抱きしめる。男性は守ってくださるものと思っていたけれど、こうして私も守ってあげられる。

 髪をなでていると、窮屈になったのか、彼は身じろぎして寝返りを打つ。

「つゆり……」

 仰向けになり、つぶやくように私の名を呼ぶが、起きている気配はない。

 私の名前を呼んでくれるのだ。眠っていても、私のことを考えてくれている。

 こんなに優しい人が愛する女性に、嫉妬してしまいそう。私は惣一郎さんの婚約者で、千隼さんを好きになってはいけなかったのに、欲深い情が生まれてしまっているのを感じる。

 この気持ちを持ち続けるのは、この世を去り、愛する人と過ごす機会を失った惣一郎さんへの裏切りなのだろうか。ふと、不安になる。

「惣一郎さん……、どこ……」

 辺りを見回す。薄く開いたふすまの隙間から、朝日が漏れている。

 惣一郎さんはいつも、私のご機嫌うかがいにやってきては、縁側から庭先に咲く四季折々の花を眺めていた。
< 25 / 128 >

この作品をシェア

pagetop