天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う

 サトさんがリビングを出て行くと、乃愛を抱いたまま啓介さんが「莉子。ゆっくり話をしよう」と言った。

「俺たちは、話をする時間が足りなかった」

「でも私は酷いことを……」

 取り返しがつかないんじゃないのかな。

 一方的に疑って復讐なんて言い出したんだもの。不義の子だと伝えたあのとき、少なくとも啓介さんは私に呆れただろうし、信頼は崩れたはず。一度壊れた絆はそう簡単に戻るとは思えない。

「いや、俺が悪いんだ。君が半年別居と言ってきたときに、もう少し食い下がるべきだった。俺も反省しなきゃいけない」

「啓介さんはなにも……」

 彼は否定するように首を横に振る。

「莉子はちゃんとサインを出していた。今ならそれがわかる。気になっていたのに」

「啓介さんは忙しかったんだもの。私が」

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