天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 内定ももらったけれど、その頃すでに父から政略結婚をして欲しいと言われていたから、会社に迷惑をかけないよう、自ら派遣社員を願い出たのだ。

 私は器用じゃない。仕事と家事を両立できる自信はなく、結婚が決まれば今の仕事は辞めるつもりでいる。

 お母様はふふっと微笑む。

「女の子ですもの、派遣社員くらいでいいのよ」

「ですよね」と、私の本音を知らない母も同意した。

 休日は習い事や料理学校に通って花嫁修行をしているとか、母がする話を気恥ずかしい思いで聞きながら、そっと溜め息をつく。

 向かいの席に座る啓介さんは、それらの話をどう思って話を聞いているのか。

 ちらりと見ると彼はお刺身に箸を伸ばしていて、表情からはなにもわからなかった。瞼を伏せ気味にして、静かに食事をしている。

 彼は無駄口を叩いたり、冗談を言って場を盛り上げようとする人ではないようだ。その後も質問をされない限り口を開かなかった。

 きっと乗り気じゃないんだろうと思いながら目を伏せた。

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