天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
『そう、それはよかったわ。じゃあねバイバイ』

 彼女の母と島津家の間になにがあったかはわからないが、これまでの話から察するに、彼女の母は不幸だったに違いない。

 鈴本小鶴は島津家が許せないのだろう。

 だとしても、啓介さんは関係ないのに……。

 啓介さんはなんらかのきっかけで彼女の存在を知り、陰日向となって助けていたのではないだろうか。

 それなのに彼女は啓介さんにまで憎悪を向ける。まるで復讐するかのように。

 私も一度は啓介さんに復讐しようと思ったのだから彼女を責めるのはおかしいけれど、彼女も早く復讐なんて忘れてほしい。

 彼をもう苦しめないで、お願いだから。

 久しぶりに思い出してつらくなった。喉の奥が締め付けられるように苦しい。

 啓介さんには幸せになってほしい。完璧で強い人だけれど、生きるのは不器用だから心配になる。

 ストイックに自分を追い詰めて体を壊していないといいけれど。

 温かい愛情で、彼を支えてくれる強くて優しい女性が、近くにいてくれるなら、私はその方がいい。
 彼が倒れるくらいなら、誰かと一緒でいてくれる方が……。

 時々思う。
 私がもっとしっかりしていて、最初から鈴本小鶴に振り回されたりせず、彼を信じられるような頼りがいのある妻だったなら、彼はちゃんと話をしてくれたんじゃないだろうか。

 私には受け止めきれないと判断したから、彼は離婚を選んだ。

 弱いばっかりに。子どもなばっかりに、父も私には病気を隠し、啓介さんも離婚を選んだ。

< 170 / 286 >

この作品をシェア

pagetop