天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 なにしろ私は医師ではないから知人は少ないし。さて、どうしたものか。

「山上副理事長。今日はありがとうございます」

 ハッとして振り向くと、うちの担当をしているMRがいた。相手は挨拶も仕事のうちだ、儀礼的とはいえ知った顔に声をかけられてホッとする。

「副理事長が参加してくださるのは珍しいですね」

「私も少しずつ交際範囲を広げようかと思いまして」

「そうですか、では是非今後とも参加してください。副理事長のような美人がいてくださると場が華やぎますし。なにしろほとんど男性ですから」

 営業トークにあははと笑いながら、なるほど確かにと思う。医師の男女比をみると女性は二割程度しかいないのが現実だ。

 母が理事長を引退したとき、この男社会で医師でない私が理事長を務めるのは現実的ではない。やはり後任を任せられる誠実な医師と再婚するのが一番なのよね。

 などと考えながら、食事をすすめられたりしているうちに、一緒に来た真知子先生を見つけた。

 声をかけようとして心臓がドクンと跳ねる。

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