天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 でも、〝もしかしたら〟を考えたらきりがないと自分に言い聞かせた。

 啓介さんが残していった思い出は、悲しみやつらさを上回る幸せだ。してもらった恩の方が大きいのに、謝られるのは切ない。

 責任感が強い人だから、かわいそうに大きな罪悪感を抱えているんだろう。

 私のせいで……。

「あさっての手術でチャラにしましょう。それでもう啓介さんは自由よ」

「自由?」

「啓介さん、私や乃愛に罪悪感感じているならそれは間違いよ。私たちはちっとも不幸じゃないもの」

 今なら言える気がした。

 今度こそ、啓介さんを自由にしてあげなくちゃ。

 島津の家の問題だけじゃなく、私たちからも呪縛を解いてあげないと。

「啓介さん、私ね。お見合いするの」

 彼の目は見れないけれど、言葉にはできた。

「相手の方が私や乃愛を気に入ってくれて、気が合うようなら再婚しようと思うんだ」

 言わなきゃ。

「だから――」

 真知子先生の期待に満ちた瞳が脳裏をよぎる。

「もうなにも心配しないで」

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