天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 痺れを切らしたように、乃愛はぬいぐるみを私に見せるように掲げて、地団駄を踏む。

「はいはい」

「おちゃかなー」

 乃愛を抱き上げて「うん。今度行こうね」となだめた。

 パパか。

 乃愛にとっては啓介さんがパパなのは変わらない。

 再婚した場合、お父さんと教えればいいのかな……。

 啓介さんと食事に行ったとき。
 氷の月に行こうという話しになった。

 氷の月は九時にならないと開店しないというので、待つ間に居酒屋で軽く喉を潤した。

 居酒屋という選択は意外な気がしたけれど、やはり彼は気の置けない空間が好きなのだ。以前も私が作ったお好み焼きをうれしそうに食べていたくらいだもの。

 居酒屋で頼んだのは揚げ出し豆腐に枝豆、焼き鳥という組み合わせ。

 私は久しぶりに飲んだ。啓介さんが一緒だと思うと酔っても不安はなかったから。

『スーツを着ていると副理事長に見えるな。馬子にも衣装だ』

『ひどーい』

 楽しくて笑いが止まらないほど笑って。

 お互い再婚しても、こんなふうに気のおけない大切な友人としていい関係を築けたらいいなと思った。

 でも――。

『莉子、再婚するなら俺が許す相手じゃないとダメだ』

 まさか、あんなふうに言うなんて。

 お酒を飲んだ上での発言だから、あの場限りの冗談だと思うけれど、彼にとっては私も乃愛と子どもなのかもしれない。


「パパ」

「はいはい」

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