天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 水族館の話をしていたのかもしれない。

 ふたりの姿を見てうれしさが込み上げたけれど、同時に切なくなった。

 あそこに私が加わっても、輪にはならない。私たちは乃愛を中心にした、線のような関係。それが無性に悲しかった。

 まだしばらくは山上総合病院に啓介さんが通う。

 心を強く保たなきゃ。

 離婚して二年も経ったのに、彼を見かける度に動揺していたのでは話にならないもの。精神的にもっと大人にならなきゃいけない。

 そのためにも――。

 瞼を閉じて、どうか今日のお見合いが結婚に繋がるようにと祈る。

 過去に捕らわれない自分になるために、新しい一歩を踏み出そう。

 ドレッサーを振り返り鏡を見る。

 ヘアアイロンでつけた毛先のカールが崩れている。久しぶりに女性を意識して化粧をした。お相手に振られないようにがんばらないとね、と自分を励ます。

 また恋をするんだ。

 今度は穏やかな大人の恋を。

「ママー」

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