天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 えっ。啓介さんを知っていたの?

「はい、すみません。たまたまここに宿泊していたようで。でも、もう他人ですから」

「彼の方はあなたに未練があるようだ」

「え?」

 ハッとして振り向くと、外を見ている乃愛を抱えたまま、啓介さんが私たちをジッと見ていた……。






「ママ、おいちい?」

「うん。とってもおいしい」

 結局お見合いは中止になった。お相手の大人な対応によって。

 彼は不意にスマートフォンを手にして『すみません。病院からの呼び出しで』と退席したのである。

 おそらくそれは嘘。『今日は本当に申し訳ありませんでした』と私が謝ると、彼は『私もまだ妻を忘れられていませんから』と答えた。

『生きているうちはいくらでもやり直せますよ』

 彼は穏やかに微笑んで席を立った。

 大人だった。間違いなく目の前のこの人よりも――。

「ん?」と、啓介さんが首を傾げる。

「啓介さんって案外子どもだったんですね」

「そうでもないだろ? なぁ乃愛」

「パパ、おしゃかな」

< 270 / 286 >

この作品をシェア

pagetop