復讐の果て ~エリート外科医は最愛の元妻と娘をあきらめない~
「あと半年。半年で全部終わるから」

 子どもを無事に出産したら離婚を申し出て、それですべてが終わる。

『半年? そんなに帰ってこないのか? 一度話をしよう。そっちに俺が行くから』

「それはちょっと、ごめんなさい……。必ず半年後には帰りますから」

 ごめんなさい啓介さん、今離婚でもめるのはイヤ。お腹の赤ちゃんを守らなきゃいけない。

 だから、なんとしてでも待ってもらわらなきゃいけないの。

「お願い啓介さん。待っていて」

 しばらく沈黙のあと『わかった』と彼は答えた。

 電話を切ってホッとした。

 軽井沢の別荘がどこにあるかは啓介さんは知らない。サトさんにも口を酸っぱくして絶対に住所は教えないでと頼んであるから大丈夫。

 啓介さんは一日も早く離婚したいかもしれないが、半年は待って欲しい。

 ちゃんと決着をつけるために、どうしても必要な時間だから。

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