天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 慌てて腰を浮かせたが、彼はちらりと見ただけで、ポケットから財布を取り出した一万円札を取り出しテープの上に置く。

「人妻に手を出すのはそういうことだ。覚悟するんだな」

 ふざけるなよ。という声が聞こえた気がした。

「離婚届は郵送する」

 冷ややかに告げて、彼は悠々と店を出ていく。

 その後ろ姿を、私は呆然と見送るしかなかった。

 調査会社が認めた報告をして謝らなきゃいけないと思っていたのに。言い出せる隙もなかった。

「あれ。ガチで怒ってるね。当然だけど」
 ハハッと流樹は苦笑する。

「流樹には絶対に迷惑がかからないようにするから、心配しないで」

 土下座をしてでも、全財産を投げ打ってでもなんとかしなきゃ。

 社会的に抹殺ってどういう意味なんだろう。あんなに怒るとは思わなかった。

 流樹は「あの人に勝てる気がしない」と、力なく肩を落とし、そのままガックリとうなだれる。
 戦意喪失とはまさにこの状態を言うんだろう。
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