妖の街で出会ったのは狐の少年でした

64話 秘密

「今日はありがとう」
「オレも楽しかったよ。付き合ってくれてありがとう。明日はどうするんだ?学校は休みだし」
「そっか、どうしよう。まぁ明日はのんびりしようかな。」
「そっか、これやるよ」
「これは?」
イヤホンの先っぽみたいなやつと液晶画面がついた小さな機械だ。
「電話。
父さんがおとくいさま?からもらったんだって。これ二つでひとつのセットなんだ。
知り合いが、友達と使おうと思って買ったんだけど相手も同じもの買ってたから使う当てがなくなって父さんがもらってきてオレにくれたってわけ。」
「なるほど。でもなんで私に?」
「なんとなく?」
「なんで疑問なの・・・でもありがとう。
どうやって使うの?」
それからジュンに使い方を教えてもらい
別れた。
「えっと、液晶で相手を選んでこれを耳につける、と」
しばらく待機していると
「あ、ナツキ?」
ジュンが応答した。なんか変な感じがする。
「よかった、繋がって。」
「まぁ、未開封だからそんなに心配いらなかったけどな」
ジュンは笑いながら答えた。
「なぁ、ナツキ。」
「ん?」
「もし、嫌じゃなければ洞窟の生活を
聞かせてくれ」
「いいよ。手紙で三人と生活してるって書いたでしよ?」
「うん。」
「犬神のコン、竜宮童子のミチルとカケル
と生活しているの。」
「そうなんだ。」
「家事は一応分担してるよ。今日魚釣ってくるのがミチル、山菜採るのが私とか。
最近は勉強を教えたりしてるよ。
と、言ってもわかる範囲でだけど」
「そっか。楽しいか?」
「きついこともあるけど楽しいことの方が
圧倒的に多いよ。」
「楽しくやれてるならよかった。
自分が楽しくないと周りを楽しい気分にできないからな」
「そっか。ジュンは?
最近どんなことしてるの?」
「どんなことって今までとあまり変わりないよ。学校に行って、終わったら家で勉強して、っていう感じ」
「ジュンも楽しそうでよかったよ」
「じゃあそろそろ切るな」
「うん。じゃあね」
「あ、ごめん。ひとつだけ。この電話のことできれば周りには話さないでくれ」
「うん、わかった。」
理由は気になったが聞かない。きっと彼には彼の事情があると思うから。
私は通話を切り、イヤホンを耳から外し、
機会と一緒にバックの内ポケットに入れる。

ナツキにはああ言ったが別に隠す理由は特にない。ただ秘密が欲しかった。
2人だけの秘密が。

次の日、私はのんびりと街中を散歩した。
じっくり見てみてると新しいお店が見える。
(ここ、前は床屋さんだったのに、
美容院になってる)
近くで中の様子を見ていると店員さんと目があった。相手は明らかに不機嫌になり、手で追い返すような素振りをし門前払いされた
(やっぱりこういう人もいるよね)
私は苦笑して、そこを去る。

カズハは今日も仕事だ。ロクも忙しいのか
今日は見ていない。
「あ、ナツキおねーちゃんだ」
チヨが駆けて来る。街中で会うのは珍しいな
「こんにちは、チヨ。」
「こんにちは」
「誰かとお出かけ?」
「うん、母さんとお買い物してるの」
チヨは満面の笑みで答えた。
後から来たチヨの母親らしき女性は
愛想笑いで会釈し
「チヨ、いくわよ」
「え、でも」
「いいから」
と強引にチヨの手を引き行ってしまった。
チヨ達が行ってしまってからふと思った。
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