妖の街で出会ったのは狐の少年でした

73話 空回り

あそこにいてもどうしようもなかったのでとりあえずナグモ様に相談した。
すると、あっさり休暇が取れた
「それは大丈夫だけど、めずらしいね。
なんかあった?」
「いえ、何もない、ですけど」
「そっか。まぁ、ロクはいつも真面目に仕事してくれているし、カズハも最近はまとまった休みを取っていないから、2人とも明日から7日間休みにするよ。今は客足も穏やかだし。」
「ありがとうございます。すみません。
ナグモ様」
謝ると
「いいのいいの。誰だって調子の良くない日はあるでしょ?」
特に気にする素振りもなく答えた。
「失礼します」
ナグモ様の部屋を出て、自分の部屋に戻る時ふと思った。
(あれ、そういえばそろそろ)

「さて、今年もやってきましたね。
 試験の時期が」
教室にはヨナガ先生の淡々とした声が響く。
「そして、最年長組の3人は最後の試験
ですね。」
試験が終わったら大きな行事は卒業のみ。
来年の春にこの教室ともさよなら、か。

「わかってはいたけど、なんか寂しいな」
放課後、3人で机をくっつけ、勉強会しているとカズハ様が呟いた。
「なんだかんだこの教室には思い入れが
あるからな」
珍しくジュンが思い耽るように言った。
「ジュンは卒業したらどうするんですか?」
俺の問いにジュンは
「オレは上の学校に行こうと思ってる。
だから卒業したらすぐこの街を出る」
ジュンの発言に空気は重くなる
「あ、でも夏休みとかは帰ってくるから。
そん時はまた、遊ぼうぜ」
この空気を壊すように明るく言った。
「カズハは宿屋に残るのか?」
「うん、今のところはそのつもり」
「というと、ロクもか」
「まぁ、そうですけど。
話してばかりで進んでませんよ。」
「あ、いい加減やらねぇと」
カズハ様が急に立ち上がり
「私、ちょっと教員室行ってくる」
「質問なら聞きますけど」
「ううん、そうじゃないの。ちょっと行ってくる」
カズハ様は手をひらひらさせ、
教室を出て行った。
喉が渇いたので、バックからペットボトルのお茶を取る。蓋を開け、口をつけようとした時、
「ロクってカズハのどこが好きなんだ?」
動揺して、ペットポトルを落とし、机の上に豪快にこぼしてしまった。
ジュンはすぐに立ち上がり、
「あー!なにやってんだよ!?」
サッと自分と
カズハ様の教科書類を持ち上げる。
「すみません!」
すぐにペットボトルを起こしバックからタオルを取り出し机を拭く
「でも被害は俺のだけで良かったです」
「悪い、タイミング間違えた」
机を拭き終わる頃カズハ様が戻ってきた。
「何やってるの。2人とも」
「あー、ちょっとな」
ジュンは苦笑いした。
「なんか昨日からおかしいよね。ロク」
「昨日から?」
「そう」
カズハ様が席につき、勉強再会。

それから数時間勉強して、俺たちは解散した
帰り道歩きながら
「ねぇ、ロク」
「なんでしょうか、カズハ様」
「ロクはさ、私が結婚したいと思う相手が現れるまで私のそばにいてくれる?」
あなたの相手は俺がいい、という言葉を飲み込み
「ええ、カズハ様が望む限り俺はあなたの
そばにいます。」
「そっか。ありがとう。ロク」
次の日
「あの、ロク。そこの答えってこれじゃない?」
「あ、そうです。ありがとうございます」
教える立場が逆に教えてもらうことになってしまった。それから毎日、勉強会を開き
挑んだ試験。返却日、3人揃って試験結果は満点という記録を出した。
この結果にはツキナ先生は感銘を受けたのか
その日の帰る時、俺たち3人にこっそり洋菓子をくれた。
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