妖の街で出会ったのは狐の少年でした

83話 入学試験

パーティーから数日後、いよいよ入学試験の日がやってきた。
試験の前日に近くの宿で一泊し、翌日に試験の午前中に試験、午後にはこっちに戻って来る予定。
もちろんそのことは先生達に伝えてある。
結果は約2週間後。手紙に合格者の番号が全部書かれた紙が試験者全員に届く。
合格者は翌日に、正式な合格通知書が届く、と言う流れだ。
オレは、父さんと宿で一泊する。
父さんに、温泉浸かってきたらと言われたが正直、そんな時間がないほど焦っている。
でもさすがに風呂入らないのは、と思い備え付けの風呂へ。
湯船に浸かっていても落ち着かず、覚えたことを何度も思い出す。
風呂から出て、浴衣に着替えて部屋に戻ると、夕食が用意してあり、父さんが待っていた。
「先、食べててもよかったのに」
「1人で食べるのはつまらないだろ?」
そう言ったが食事中に話しかけて来ることはなかった。
仲居さんがお膳を下げにきてから、またノートに目を通す。
参考書を借りたときに、必要なところはほとんどノートに書き写していた。
一息ついて時計を見ると一時間経っていた。
父さんがそろそろ布団に入ると言ったが、オレはもう少しだけと言ったら
「そうか」
とだけ言い、布団に入った。
(絶対に諦めない)
それからオレはしばらく勉強していたが眠気に勝てなくなり寝落ちする前に布団に入り、電気を消す。
(やれるだけのことはやった。)
翌日、受験番号の紙をもらい試験会場に入る。
中には結構人がいる。この人たちはライバルであり仲間なんだ。
10分だけ時間があり、各々リラックスしたり復習したりしている。
オレは半分、復習半分はリラックスしている。
試験監督が用紙を裏向きに配る。
深呼吸をし、監督の合図で用紙をめくった。
そして。
オレは、試験会場の外にいた。緊張しすぎて、試験の記憶はほとんどない。
父さんが待っていた。
「どうだったんだ」
「まぁまぁかな」
オレの抜け殻のような姿を見てか
「お姉ちゃんに内緒で何か美味しいもの食べていこうか」
と気をつかってか言ってくれたが、正直オレは食事どころではなかった。

次の日、
学校に行くと、
チビたちに
「風邪、大丈夫」
「は?」
「一昨日と昨日風邪ひいて休んだって聞いた。お見舞いに行こうとしたら、病人に相手させるのはよくないってヨナガ先生に言われてやめたんだけど」
どうやらオレは風邪で休んでることになっているらしい。
「あー、大丈夫。心配してくれてありがとう。」
オレはチビたちを軽くあしらいロクのところへ。
「おはようございます」
「おはよう、ロク。風邪ってどう言うことなんだ?」
ロクは耳がいいから小声でいいのが助かる。
「受験っていうと根掘り葉掘り聞くかもしれないからと、ヨナガ先生なりの配慮だと思いますよ。」
「そうなんだ。ロクは聞かないんだな。」
「何をです?」
「受験」
「今は聞きません。あとで尋問します。」
「尋問って
「冗談ですよ。」
ロクはふわっと笑った。
放課後、先生に手招きされ、家庭科室へ移動する。
「どうでしたか?」
「緊張したけど、自分の力を出し切れたと思います。」
「それはよかったですね。失敗してもその挑戦は誇っていいと思います。」
「ありがとうございます、ヨナガ先生」
それからは他愛のない話をしてオレは家に帰った。
そして昨日のことを思い出す。
「自分勝手、か。」
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