妖の街で出会ったのは狐の少年でした

84話 電話

家に着いたオレは、床に寝転びため息をついた。
「めっちゃ大変だったな。」
(会場にいた人たち、すごく怖いように感じた。
仮にオレが受かったとして、あの人たちが仲間になるんだ。
怖い、けどワクワクする)
「あ、そうだ。」
オレが起き上がり、電話に手を伸ばす。
呼び出し音が数回、
「もしもし、ジュン?どうしたの?」
声を聞くと、すごく安心する。
「あ、ナツキ、久しぶり」
「久しぶり、あ、お菓子ありがとう。」
「よくわかったな、名前書いてなかったのに」
「すぐにわかったよ。ジュンが送ってくれたんだって」
ナツキはクスクスと笑っていた。
「それで珍しいね。ジュンからかけて来るなんて」
「実は、今日入学試験だったんだ。
上の学校の。」
「そっか」
ナツキはただ一言だけ言った、
「オレ、ずっとやりたいことが分からなくてさ。
思い返せば、オレ最低だなって」
「え?なんで」
「オレ、受験した学校の前に一回進路について家族で話しあったんだ。
んで衝突して、家飛び出してすごく迷惑かけた挙句、勝手に進路変更して、
受験させてもらって。思い返せば最低なことしたなって、」
「自分勝手、」
なにか言われるとは思っていたが実際に言われると堪えるな。
「自分勝手なんだよ私も、ジュンも、みんな。私、前に言ったでしょ?自分勝手に学校に通って~、
って。」
「うん」
「私、後悔してないよ。あの時の行動。新しい生活、新しい仲間。大変なことの方が多いけど
後悔してない」
ナツキの声は力強かった。
「人生設計してその通りうまくいく人なんて一握り。誰だって裏では悩んで、挑戦して、間違って、後悔して。でも後悔の先に新しい道を見つけて悩んで挑戦してって繰り返してるんだよ。」

「なんか、悟ってるようだな」
「そう?でもジュンの肩少しでも軽くできたらいいな。」
「少しじゃない、かなり軽くなった。ありがとう」
「どういたしまして」
少し得意げになったような声で聞こえる。

2週間後、そろそろ卒業が近くなってきた時、一通の手紙が届いた。
「これって、」
試験合格者発表の通知だった。
オレは部屋に戻り引き出しから、受験番号の紙を取り出す。
2098
これがオレの番号
オレは震える手で慎重に封を切る。
104.305.369.471.・・・
「2054.2087.」
その後にあった数字は2098。
「あっ、た」
やっと、山場を越えた。
父さんたちには夜、帰ってきたときに話した。
そしたら
「快気祝いだ」
て、外食を提案してきて外へ。
緊張というわだかまりがなくなったからか、味の感じ方が違った。
ナツキには手紙で報告することにした。
(言葉は消えるけど、手紙はずっと持っていられる)
「・・・なんてな」
次の日、授業が始まる前に教員室へ行き先生達へ報告した。
ヨナガ先生に
「おめでとうございます、これからが本番ですよ」
と言われ、校長先生から肩を掴み前後に揺らされ
泣きそうになりながら、いろいろ言われた。
おめでとうと言われたことはわかったが他はわからなかった。
首が伸びて、地面につきそうになる。
前にもあったな、こんなこと、
と楽観的になる。
まぁ、なんだかんだで先生達に報告が
終わり、オレは教室に戻る。
「なにかありましたか?」
ロクに開口一番にそう言われた。
「なにか?」
「しばらく、ジュンは落ち着きがありませんでしたが今は生き生きしてるように見えます。」
よく見てるな。
「実は、」
ロクは目を見開き驚きはしたものの
「おめでとうございます。」
と言ってくれた。
カズハにも報告するとすごく喜んでいた。
そして、家に帰るとナツキからの返信と、正式な合格通知書が届いた。
ナツキからの手紙を読んでオレの顔は綻んだ。
< 84 / 100 >

この作品をシェア

pagetop