恋桜~あやかしの闇に囚われて~
だが、写真は加工アプリで編集したあとのように色褪せてぼやけていた。動画は酷いノイズが入っており、ミツルらしき人物がしゃべっている最中にプツリと途切れた。
冷たい水を浴びせられたような震えが止まらない。
これは……単に失敗したんだ。スマートフォンの機種変更をしたばかりで慣れていなかったから、撮影に失敗した。昨日確認しなかったから、わからなかった。最初からこうだったんだ。自分に言い聞かせて、写真と動画を削除した。フォルダからなくなると、少し気持ちが落ち着いた。
和真は気を取り直して車のエンジンをかけた。
きっと山道の途中で、ミツルがぶつぶつと文句を言いながら待っている。寝坊すんなよとか、もう歩き疲れたとか、そんな他愛のない愚痴をこぼしたあと、あっけらかんとして言うだろう。
――じゃあ、行こうぜ、和真。動画の編集も手伝えよ。
唯ざわり、ざわりと。
春の山が疾風に蠢く。
荒れ果てた廃村の古い塚では、もう誰も見ることのない桜の蕾がほころんでいた。
冷たい水を浴びせられたような震えが止まらない。
これは……単に失敗したんだ。スマートフォンの機種変更をしたばかりで慣れていなかったから、撮影に失敗した。昨日確認しなかったから、わからなかった。最初からこうだったんだ。自分に言い聞かせて、写真と動画を削除した。フォルダからなくなると、少し気持ちが落ち着いた。
和真は気を取り直して車のエンジンをかけた。
きっと山道の途中で、ミツルがぶつぶつと文句を言いながら待っている。寝坊すんなよとか、もう歩き疲れたとか、そんな他愛のない愚痴をこぼしたあと、あっけらかんとして言うだろう。
――じゃあ、行こうぜ、和真。動画の編集も手伝えよ。
唯ざわり、ざわりと。
春の山が疾風に蠢く。
荒れ果てた廃村の古い塚では、もう誰も見ることのない桜の蕾がほころんでいた。


