恋桜~あやかしの闇に囚われて~
 ふらふらと丘を登りミツルを探すが、そこには誰もいない。飲み食いしたまま放っておいたはずの缶や瓶、レジ袋やゴミもどこかに消え失せていた。

 突然恐怖と焦燥感に駆られ、和真は思わず走って車に戻ると、慌ててエンジンをかけた。昨夜はまったく反応しなかったエンジンが無事かかって、とりあえずほっとする。機器の異常もないようだ。

 ミツルの荷物は、と思い立って後部座席を覗くと、そこには何も残されていなかった。俺が寝ている間に取りに来たのか……?

「ミツル……」

 とにかく落ち着こう。あんな立派な桜の木が一夜で枯れるなんてありえない。昨夜はずいぶんと飲んだから、記憶が混乱しているのかもしれない。

 たぶん満開の桜は、夢で……花見酒だと冗談を言いながら、ミツルと酒を飲んだのだ。ミツルの性格からは想像できないが、その後ミツルが片付けをして、車から荷物を取り出し、ひとりで先に村の外へ出ようとしたのだろう。

 そう言えばと思い出して、スマートフォンを手に取った。日女薙村で撮った写真や動画がある。

「…………」
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