火の力を持つ国王様は愛も熱い



アヴァンカルド王国へ向かう日。



今はうちの国は王族ですら新しいドレスを持っていない。
先代から残されているドレスを直して着させられる。

今、苦しい状況の中国民の支持だけは下げる事が出来ないので王族だけが贅沢をする事は出来ない。

ドレスを着たのは建国記念の日以来。
普段から着ているように振る舞わないと…


そして、隣国だからという理由から徒歩で向かう。


私のお爺様の代から既にこの生活だから普通の王族がどうなのか知らないけど、馬車くらい出してくれてもいいのに。


贅沢は言ってられないけれど、いくら隣国とはいえドレスで歩く距離ではない…


従者も二人しかいないし。


かなり歩いて、やっと国境の水門に辿り着いた。


到着予定時刻より早く到着してしまい、アヴァンカルド王国の迎えもまだ来ていない。


この辺りは雪はほとんどないけれど、うちの国とは比べ物にならないくらい寒い…雪国ってこんな寒いの?


雪がある場所にいったら凍え死にそう…


改めて周りを見ると、水門の他に何処からか水の流れる音が聞こえる。


「ちょっと周り見てくるわ」

「あまり遠くに行かれないでくださいね?直に迎えが来ますので」

「うん、わかった」


水の音のする方へ向かうと、手入れが入った広場のようなところへと出る。


国境近くにこんなところあった?


ここまで来るのは初めてだけど、確かこの辺りはかつて水の国があった場所。


広場の中央には瓶を持ったヴィーナスの像が佇んでいて、瓶からは水が流れている。


その姿がとても美しく見とれてしまう。



「綺麗…」

「誰?」


呟くと、人がいるなんて全く気がつかなかった。


像の後ろから男の人が出てきた。



サラッとした金色の髪に、宝石みたいなブルーの瞳、透き通る様な白い肌。


その男の人の姿があまりにも美しくてまたもや見とれてしまう…


この場所で流れる澄んだ水のイメージとすごく合っていて水の国が蘇ったのかと思った。


「え…?」

「…もしかして、ライマーレ王国の?」

「はい、えーっと…この度、ライマーレ王国から来ましたルーナ・ライマーレと申します」


私はドレスのスカートを摘んでお辞儀をした。


すると、男の人は微笑んで私の前に立つ。


「あなたがルーナ姫様でしたか、申し遅れました。アヴァンカルド王国王子。アクア・アヴァンカルドです」

そう言ってスマートにお辞儀をされる。


「…アヴァンカルド王国の!?」

「アヴァンカルドの国領内ですし、そんなに驚かれなくても」


アヴァンカルド王国の王子様にクスクスと笑われてしまう。


「…王子様なのにお一人ですし」

「あぁ、あまり連れ歩くの好きじゃないから。改めてお迎えに上がりましたルーナ姫様」

すると、私の手を取り手の甲にキスをした。


!?


お、王子様だ……本でしか見た事ない!本物の王子様!

うちにも兄上がいるけど、こんなことしてるところ見た事ないし第一見た目もこんなに麗しくない。


「お待たせしてしまったようで、申し訳ございません」

「いえ、予定より早く着いてしまったので」

「僕はこの場所の様子を見に先に着いていたので、もうすぐ馬車が到着する頃かと」

「そうだったのですね、この場所…あの水の国があった場所ですよね…そう!アクアヴェールが…そういえばお名前」

「父上と母上がこの場所を気に入っていたのでそれが由来してます」

そう言って微笑む。

「…あっ、申し訳ございません!私、ライマーレ王国の者がこの場所にいるだなんて!すぐに水門へ戻ります」

この場所を壊したのはうちの国だ…




< 128 / 162 >

この作品をシェア

pagetop