火の力を持つ国王様は愛も熱い
水門


水門は隣国ライマーレ王国との境界にあり、その附近は両一般国民は許可された者以外は立ち入りが禁止されているエリアだ。



視察への同行は護衛兵が二名と私のみ。



ほとんど人が立ち入らないエリアなだけあって馬も入れないほど荒れた道だ。



「…エマ、道が荒れているから俺に捕まると良い」



護衛の一人が私に気を遣ってそう言ってくれた。


護衛兵の二人はエドワード王様と修行を共にしたとの事で、道中和やかな雰囲気だった。



「ありがとうございます、でも頑張って気を付けて歩きますっ」


専属使用人なんだからいつまでも人に助けて貰ってたら駄目だ。


「ハハッ!そんな気張る事ないぞ?しかし…エマは可愛いな。今夜食事に行かないか?城下町に良い店があるんだ」

「おい…エマを食事に誘うなら俺の許可を得てからにしろ」


もう一人の護衛兵と共に先を歩いていたエドワード王様がいつの間にか戻って来ていて、私の腰を自分の方に引き寄せた。


「え……それじゃあ…エドワード王様。エマを今夜食事に誘っても構わないでしょうか…?」


「ふん…却下だ。エマはこれからは俺と食事を共にするからな!」

「エドワード王様!聞かせておいてそれはないですよ!」

「お前馬鹿だな、エドワード王様が専属に任命した子はそういう事だろ…護衛兵の分際で国王様と穴兄弟になれるわけがないだろ」


もう一人の護衛兵が小突きながら小さい声でそう言った。


そういう事…?
って何だろ?それに穴兄弟?



「穴兄弟?ってなんだ?」

「こ、国王様には無縁のお話でございます!」

「それよりこの先足元が余計に荒れている。エマのエスコートは俺がやるからお前達は前後の護衛をしっかりやれ」


エドワード王様はそう言って私の手を引いて、私が転ばないように配慮してくれた。



< 30 / 162 >

この作品をシェア

pagetop