火の力を持つ国王様は愛も熱い


完全に無視するつもりだったのに、ローレンス様が私を案内する為に準備してくれたと聞いてついローレンス様の案内を受ける事になってしまった。

「城内警護の者各所に配置しております。カイル様には客室を用意しておりますので、そちらで夕食までお休みになられて下さい」

ローレンス様が私の付き人でいるカイルにそう声を掛けているのを見てハッとしてカイルの腕を掴んだ。

「え!やだ!カイルも一緒に来てよ!」

「姫様、私は明日にはここを発ちます。明日からこちらにはサシャールの者はいません。今から慣れてください。ローレンス様に御無礼のないように」

「…」

「ローレンス様、姫様を宜しくお願い致します」

カイルはいつもわがままを聞いてくれて優しいのに初めて厳しくされた…

そして、広間には扉には護衛兵がいるけれど実質ローレンス様と二人だけにさせられてしまう。

「リリィ姫、まずはリリィ姫の自室へ…エスコート致しますのでお手をどうぞ」

「……エスコートいりませんっ」

「腕の方が?」

ローレンス様はそう言って腕を差し出した。

「いりません!場所だけ教えて頂ければ自分で行きます!」

ハッキリとそう言うとローレンス様は笑った。

「はいはい、お城の中は広いですからね。迷子にならないよう着いていてくださいね」

ローレンス様はそう言うとなんと私の手を繋いで手を引いた。

「ちょっ…手繋ぐのやだ!年下だと思って馬鹿にしてる!」

「まさか、馬鹿になんてしてませんよ?リリィ姫様」

すると繋がれている手の甲にまたキスをした。

「!!」

「そんなに気を張らなくて大丈夫。異国の地で不安もあるだろうけどさ。すぐに結婚する訳じゃないから少しずつ距離を縮めていこう」

「…」

ローレンス様に優しく微笑み掛けられると少し安心してしまって、私は繋がれた手をギュッと握って応えた。

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